流行している「冬バテ」
コラムをご観のみなさんは、「冬バテ」という言葉をご存じだろうか?「夏バテじゃないの?」と思った方もいるかもしれない。暑い日々が続くと、食欲が出なくなったり、倦怠感におそわれて活発に行動できなくなったり、あるいは睡眠不足になったりといった体調不良を抱えることがある。そのような症状をまとめた俗称のようなものが「夏バテ」だ。しかし、最近では地球温暖化の影響もあり四季の変化が急激で、前日からの気温差で体調に異変をきたす人が続出している。そのため昔よりも四季の変化が急激になり、秋冬シーズンにも「秋バテ」や「冬バテ」といった言葉が生まれている。
このような、温度差による体調の異変は、外気温による前日とのギャップだけではなく、暑さや寒さによりエアコンを起動させることでさらに促されている。温度差を繰り返し感じることにより、自律神経の働きが乱れていくのだ。実は日中と夜間の気温差でいうと、冬場は夏よりもさらに大きく、加えて寒さで暖房をつけることにより室内外でも気温差が生じるため、体調不良を起こすリスクが大きい。今後日本では、「夏バテ」という言葉に並ぶ、あるいはそれ以上に「冬バテ」が流行していく可能性があるのだ。
「冬バテ」で起きる主な症状には、次のようなものがある。
・食欲不振
・適度な睡眠時間を取っても疲れがうまく抜けない
・眠りが浅くなり、夜中に目が覚めてしまう
・身体に倦怠感を感じる
・神経過敏になり、怒りっぽくなる
・頭痛や肩こりになる
身体的な異変から、精神的なものにいたるまで、様々なものが挙げられる。
室内外での気温差によって引き起こされるので、仕事や学校生活などで長時間外出する人は、防寒着や暖かい飲み物で補うなど、冬場はより一層体温調整のために気を配ることが重要だ。
冷え性対策から「冬バテ」を防ぐ
話は変わるが、冬の時期に多い不調の訴えとして、最も多いものの一つに「冷え症」がある。寒さが増してくると手先や足先が冷たくなる、あるいは一旦手足が冷えるとなかなか温まりにくく辛いという訴えが多くなるのだが、この「冷え症」もまた、急激な温度差で体温調節機能がうまく作動しないことによって生じる。人間はもともと、気温が変化しても体温を一定に保とうとする「恒温動物」である。血液の流れる量を変化させる、汗をかくなどといったことで体温を一定に保つ機能を備えているのだが、それは皮膚から「寒い」という情報が脳にある自律神経の中枢「視床下部」に伝えられることで作動している。しかし、なんらかの原因で本来はたらくべき体温調節機能がうまく作動していない状態になると「冷え症」が表れる。
主な原因として考えられることは
・ストレス不規則な生活により自律神経に乱れが起きている
・下着や靴などのサイズが合っておらず、締めつけで皮膚感覚に乱れが起きている(麻痺)
・貧血や低血圧、血管系の疾患により血液循環が悪化している
・加齢や運動不足などで筋肉量が少なく、発熱や血流量が少なくなっている(女性に多い)
・女性ホルモンの分泌が乱れ、血行が悪化している
などが挙げられる。単純に衣服を変えるだけで改善に導けるものもあるが、自律神経のはたらきを正常に戻すことで改善できるものもあるので、冷え症の対策は「冬バテ」の症状を改善することと共通項が多い。今回このコラムでは、最後に「冬バテ」や「冷え症」に悩む方に少しでもお役に立てるセルフケア術をご紹介したいと思う。なお、これらのセルフケアを行っても、一行に症状が改善しない場合は、一カ月以内に医療機関を受診して、血液系の疾患などを抱えていないか診察してもらうことをおすすめする。
激しい寒暖差での体調不良を補うセルフケア
1、有酸素運動を生活の中に取り入れる
自律神経のはたらきを整えるために有効なものとして挙げられるのは、まずは「有酸素運動」である。これから習慣づけを始めたい人には、ウォーキングをおすすめする。日々の生活の中で取り入れることができ、手軽にできるリズム運動とされている。1日に最低でも20分続けると脂肪燃焼効果も得られるので、ダイエット目的と一石二鳥になりおすすめだ。街並みの景色を楽しみながら続けられると新たな趣味にもなるだろう。しかしながら、自律神経を整える目的であれば朝晩で10分ずつに分けて行ったり、いつもはバスや電車などを利用するところを徒歩に切り替えたり、買い物に行くのに車を利用していたのをあえて歩いてみるなど、無理に時間を決めずに少しずつ歩く時間や距離を増やしていくようにするだけでも効果はある。運動が苦手な人もいるかと思うので、そのあたりは自分流の運動術を色々と見出してほしい。時間帯としては、特に朝行うのがおすすめだ。神経伝達物質のセロトニンによるリラックス効果が期待でき、身体をすっきりと目覚めさせて体内時計を活動的に切り替えてくれるためである。
体内時計を活発にするという意味では、ウォーキングではなくサイクリングを行うのも良いだろう。ペダル運動によりセロトニンの分泌が促されるという効果も期待できるし、サイクリングの方がより一定のリズムで運動でき自律神経が整うことも考えられる。単純に乗り物を使ったほうがより長距離の移動ができるため、景観が変わる楽しみを見出せて続けやすいという人もいると思う。この辺りは好みの問題なので、生活環境なども加味しながら、自分にはどちらが合うか考えてみてほしい。一定のリズムで運動することで言えば、ダンスもまた、音楽に合わせて楽しくできる運動としておすすめだ。単調な運動だと飽きてしまうようなタイプの人には、ダンスを試してほしいと思う。
運動が苦手で、外に出歩くのがあまり好きではないという人は、階段や踏み台を用意して行う「ステップ昇降」でも十分に有酸素運動になるので取り組んでみてほしい。一定のリズムで15分ほど行えば、立派な有酸素運動になってくれる。いずれにせよ、極力これまでの生活環境から大きく変えることなく、あくまで「日常」の中で運動により自律神経を整えるという意識を持ったほうが、継続して「習慣」にしていくことができるのでおすすめだ。
2、食事により体内を温める
激しい寒暖差による体調不良を防ぐ方法としては、食事は重要である。腸内環境を整えることにより、ストレスの軽減や睡眠の質の改善、さらには身体の免疫機能も高まるので、感染症などから身を守ることにも繋がる。腸内環境を整えるというと、どうしても牛乳やヨーグルトなどの乳製品を真っ先に思い浮かべてしまうが、ここでは味噌や納豆などの発酵食品をおすすめしたい。冬の時期はニンジンやレンコン、ゴボウやほうれん草といった野菜が旬を迎えるため、これらを煮込んでスープを作ったり、豚汁などにすると身体を温めてくれる効果が得られたり、納豆をかけたご飯も合わせやすいので、食欲も増す。寒暖差により倦怠感が出ると、どうしても食事量が落ちてしまうという人もいるので「冷え症」の対策としてでなく、食欲不振の観点からも発酵食品をいつの間にか摂取できていたというような工夫に繋がると思うので、ぜひこの冬から取り入れてほしい。
3、着脱しやすく要点をしっかりと抑えた防寒着
防寒着、ファッションの面も自律神経の不調や冷え症に対しては立派なセルフケア術である。コラムをご覧の方にぜひ意識してほしいのは、暖房などで発生する室内外での激しい寒暖差にも対応できるように、できるだけ着たり脱いだりが簡単な防寒着を選んでほしいということだ。セーターなどの一枚着れば過ごせる服も良いのだが、「冬バテ」を感じて悩んでいる人はジャケットなどできるだけ上着を着る服を選んだほうが、適宜調整することができるのでおすすめだ。あるいは、マフラーや耳当て、毛糸の帽子や手袋なども着脱によって調整できるため、無理に服を厚着にするよりも防寒には効果的だ。あとは首、手首、足首の「3つの首」をできるだけ露出せずにしっかりと覆うことで、上着を重ねていくよりもより体内を温かく保つことができるため意識してほしいと思う。
冬バテ対策で充実した毎日を
最後になるが、「バテる」というと単に「疲れている」であったり「生活が不規則になっている」という程度の軽い響きにも聞こえてしまうが、これまでにご紹介した通り、睡眠不足で日中の活動時間が大きく減ったり、神経過敏になって怒りっぽくなることで人間関係にも大きな悪影響を及ぼすことがあり、想像以上に危険なことである。対策としてはこれだけ多くのことが、普段の生活の中に取り入れるだけで行えるので、今回のコラムを参考に、ぜひとも寒暖差によるギャップを乗り越え、楽しく充実した生活を送ってほしい。
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